急激な視力低下とは、数分から数日以内に起こる視力低下のことです。
外からの光が眼の奥の網膜に届かなくなるような、眼の中の濁りや網膜の損傷があったり、網膜から視神経、脳へと神経信号が伝わる道筋で異常があったりすると視力低下が起こります。
症状は片眼だけに限らず両眼に同時に起こることもあり、その原因によって視野全体に及ぶこともあれば、視野の一部のみに見にくさを感じる場合もあります。また、視力低下だけでなく眼痛や頭痛、充血など他の症状を伴うことがあります。
急激な視力低下の原因として以下のようなものが挙げられます。
角膜の傷や感染、急性緑内障発作、眼の中の出血(硝子体出血)、網膜の血管閉塞、網膜剥離、視神経症、脳卒中や一過性脳虚血発作など。
急激な視力低下の原因は重篤なものが多く、速やかに眼科を受診して検査を受けることが重要です。
関連する病名
角膜感染症、化学眼外傷、急性緑内障発作、硝子体出血、網膜剥離、網膜静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、視神経症 |
網膜剥離
原因・病態
■はじめに
眼球はカメラに例えることができますが、網膜はカメラのフィルムに当たるものです。レンズに相当する角膜・水晶体から入った光がフィルムに相当する網膜に当たると網膜はそれを電気信号に変えて、視神経を介して脳に刺激を伝える結果、ものが見える、ということになるわけです。網膜剥離は網膜が何らかの原因により眼球壁側から剥離したことを指し、治療法、経過はその原因により異なります。
■網膜の構造
前述のように網膜はものを見るための神経の膜です(図1)。網膜は10層の組織から構成されていて、最も深い部分を網膜色素上皮と呼びます。網膜剥離とは、何らかの原因で網膜が網膜色素上皮から剥がれてしまう状態のことです。ものを見る中心部分を黄斑(おうはん)と呼び、ここは光に対して最も敏感な部分です。
■網膜剥離の分類
(1)裂孔原性網膜剥離
網膜剥離の中で最も多くみられるもので、網膜に孔(網膜裂孔・網膜円孔)が開いてしまい、目の中にある水(液化硝子体)がその孔を通って網膜の下に入り込むことで発生します(図2)。一般に、はじめのうちは剥離した網膜の範囲は小さく、時間とともにだんだんこの範囲が拡大するというような経過をたどりますが、孔が大きいと一気に進みます。剥離が進行すればすべての網膜が剥がれてしまいます。網膜に孔が開く原因として、老化・網膜の萎縮・外傷などがあります。剥がれた網膜は光の刺激を脳に伝えることができません。また、剥がれた網膜には栄養が十分行き渡らなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと徐々に網膜の働きが低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。遠視・正視よりも近視、特に強度近視でより多くみられ、どの年齢でも網膜剥離になる可能性がありますが20代と50代の人に多いといわれています。
(2)非裂孔原性網膜剥離
牽引性網膜剥離と滲出性網膜剥離があります。裂孔原性網膜剥離と同様に網膜剥離が起きた状態ですが、原因、経過はさまざまであり裂孔原性網膜剥離とは大きく異なります。
牽引性網膜剥離は眼内に形成された増殖膜あるいは硝子体などが網膜を牽引することにより網膜が剥離して起きます。重症の糖尿病網膜症などでみられます。
滲出性網膜剥離は、網膜内あるいは網膜色素上皮側から何らかの原因で滲出液が溢れてきたために網膜が剥離してしまった状態です。ぶどう膜炎などでみられます。
■裂孔原性網膜剥離の症状
網膜剥離の前駆症状として飛蚊症(小さなゴミのようなものが見える症状)や光視症(視界の中に閃光のようなものが見える症状)を自覚することがありますが、無症状のこともあります。病状が進んでくると視野欠損〔カーテンをかぶせられたように見えにくくなる症状(図3)〕や視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので、痛みはありません。
網膜裂孔・円孔だけであれば、レーザーによる網膜光凝固術あるいは網膜冷凍凝固術で網膜剥離への進行が抑えられることもあります。すでに網膜剥離が発生してしまった場合、多くは手術が必要となります。網膜剥離は治療せずに放置した場合、失明する可能性の高い病気です。
手術は大きく分けて2つの方法があります。
一つは目の外から網膜裂孔に相当する部分にあて物をあてて、さらに孔の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って剥離した網膜を剥がれにくくし、必要があれば網膜の下に溜まった水を抜くというやり方です(図4)。必要に応じて、あて物を眼球に一部あてるだけでなく、眼球を輪状に縛ることもあります。剥がれた網膜を目の中から押さえつけるために、眼内に空気や特殊なガスを注入することがあり、この場合は手術後にうつぶせなどの体位制限を伴う安静が必要です。
もう一つの方法は、目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療する硝子体手術という方法です(図5)。この方法では、剥がれた網膜を押さえるために、ほぼ全例で目の中に空気や特殊なガスあるいはシリコーンオイルを入れます。この方法においても手術後にうつぶせなどの体位制限が必要となります。
手術療法によって多くの網膜剥離は復位させることができますが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。また、重症例は増殖性硝子体網膜症と呼ばれ、剥離した網膜上に増殖膜が形成された状態で難治であり、最大限に手を尽くしても、残念ながら失明してしまう場合もあります。
網膜剥離の重症度にもよりますが、手術療法では1回の手術につき1~3週間の入院を要することが一般的です。日常生活や運動などが始められるようになるまでの時期に関しては個々のケースで異なるため、医師によく状況を聞くなど、医師とよく相談する必要があります。
術後の視力に関しては、もともと黄斑が剥がれていない場合には手術前と同程度にまで回復する場合もありますが、黄斑が剥がれてしまっていた場合には、もとどおりの視力に戻ることは難しくなってしまいます。網膜剥離が発生から間もない状態であり、剥がれている範囲も小さい場合は、手術も比較的簡単で見え方ももとどおりに回復する可能性が高いといえます。飛蚊症や光視症のような症状を自覚した場合には、早めに眼科医の診察を受けることが大切です。
コンタクトレンズやメガネが適正じゃない
多くの人が普段からコンタクトレンズやメガネを使用していますが、度数が合わないものを使用していると、視力低下の原因となる場合があります。
度数の合ったメガネやコンタクトレンズを使用するために、定期的に視力検査をするように心がけましょう。
パソコンやテレビの見過ぎ
長時間パソコンを使用したり、ゲーム機を操作したり、目を酷使する場面が続くと急激な視力低下に繋がります。近くのものを見続けていると、脳が勘違いをして「近くを見やすい目にしてあげよう」と目の構造を作り変えてしまうからです。
テレビをまっすぐ見ずに、斜めの方向から見ることも原因のひとつです。眼球がゆがんで乱視になり、乱視が原因となって急激に視力が低下します。暗い場所で勉強をしたり、本を読んだりすることも視力低下の原因になります。
生活習慣のほかにも、目の病気が原因で視力が急激に低下することがあります。 たとえば「急性緑内障発作」です。
突然眼圧が上昇する病気で、すぐに処置をしないと失明してしまう可能性がある怖い病気です。症状は視力の低下以外に、頭痛、吐き気、充血、眼痛などが現れます。
急激な視力低下を放っておくと失明するリスクもあるため、早く眼科を受診してください。
子供の視力低下にはストレスも関係している
近年では、子供の視力が昔と比べて大幅に低下していると言われています。
その理由の一つとして、数十年前の外で遊ぶことが多かった子供に比べ、近頃の子供はテレビだけでなくパソコンやスマートフォンと密接な生活を送っています。加えて、勉強や受験、友人関係、家庭内環境などの多くの心身的なストレスが原因とも言われています。
ケガによる視力低下
ボクシングのような格闘技などで目に強い衝撃を受けたときも、視力が急激に低下することがあります。
急激な視力低下を放っておくと失明するリスクもあるため、早く眼科を受診してください。
急激な視力低下から考えられる病気
急激な視力低下の症状から考えられる病気は、白内障・急性緑内障発作・黄斑変性・糖尿病網膜症・網膜剥離・ぶどう膜炎があげられます。
「白内障」の代表的な症状は視力低下!
白内障は、眼の中のレンズ(水晶体)がにごり、曇りガラスを通してモノを見ているような状態になる病気です。
レンズのにごりの位置や程度によって違いますが、目がかすむ、ぼやける、光をまぶしく感じるなど様々な症状があらわれます。そのほとんどは加齢が原因と言われています。
白内障
「急性緑内障発作」を放置すると失明の危険も!
急性緑内障発作が進行すると、頭痛、目の奥の痛み、充血、吐き気、虹のようなものが見える、などが起こり、発症してから時間が経つほど視力の低下や視野の狭まりなどの症状が出てきます。治療をしないままでいると、短期間で失明に至ることもあります。
急性緑内障発作
視界が歪んだり、視力に異常が起きる「黄斑変性症」
黄斑変性症は網膜の中心にあるため、見ようとしている場所が見えにくくなります。また中心部がゆがむ、暗く見えるなどの症状もあります。
老廃物がたまり栄養不足になることで徐々に萎縮していく進行のゆっくりなタイプや、新生血管という異常な血管が脈絡膜から伸び血液が黄斑組織内に漏れ出し、ものを見る細胞の機能を障害するという進行の早いタイプがあります。
黄斑変性
「糖尿病網膜症」は最悪の場合失明に至ることも
糖尿病網膜症とは、糖尿病の三大合併症のひとつとして知られる病気です。
網膜の血管はとても細く、ほかの血管よりも糖尿病の影響を受けやすい部位です。目のかすみや視力の低下が起こるほか、最悪の場合失明に至ります。
糖尿病網膜症
視界が欠けたり飛蚊症なども起こる「網膜剥離」
網膜剥離とは、網膜が眼底から剥がれてしまう病気です。
網膜が眼底から剥がれてしまうと栄養補給が途絶えて光に対する感度も低下します。その結果、目が見えにくくなったり、視界が欠けたりするなどの症状が現れます。
網膜剥離
様々な問題が起きる「ぶどう膜炎」
ぶどう膜炎とは、充血、視力低下、かすみ、まぶしい、歪み、黒いものが飛ぶなど、様々な症状が起こる病気です。
ぶどう膜自体が炎症を起こす場合だけでなく、血液の流れによって全身の他の臓器に炎症が起こった時に連動してぶどう膜に炎症が起きてしまう場合もあります。 ぶどう膜の炎症は網膜にも影響が出るため、視力の低下や失明にも繋がる恐れがあります。
ぶどう膜炎
急激な視力低下のケア
適正な姿勢と明るさでの生活を心がけて
姿勢が悪かったり、寝ころんで読書やテレビを見るのは、近視が進んだり左右での視力差が出る可能性が高いです。急に近視が進んだときには、姿勢を正すだけで改善することもあると言われています。
また、暗いところで本を読んだり勉強をしたりすることでも負担がかかるので、あまりよくありません。出来るだけ明るい部屋で行いましょう。
遠くを見て目を休ませましょう
目を酷使したときは、目を休ませてあげましょう。
温かいタオルを目の上に乗せて血行促進させたり、遠くのものをしばらく見つめたりする
と効果的です。
眼を近づけて色々なことをする近行作業によって緊張した毛様体筋をほぐし、
近視を進みにくくします。
また、室内にこもっているだけではなく、屋外へ出ることだけでも効果があります。
子供の視力低下は気づきにくい
子供自身は「視力不良」に気付きにくく、発見が難しいと言われています。子供の目の健康を守るためにも、親だからこそ気付くことができる「視力不良」のサインを見つけてあげましょう。
また、何らかの理由でストレスを抱えている子供も増えてきているので、今一度子供に心身的負荷をかけていないかを見直してあげてくださいね。
最近では手術を必要としない、寝る時につけるコンタクト「オルソケラトロジー」で、子供の近視の進行を出来るだけ抑制する方法も普及しています。
症状が改善させない場合は自己判断せず、お気軽にご相談ください。